しずく

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 それは眠れない夜のこと。
「…あれ、優?」
 後ろから声をかけられて、ビクッと肩が跳ねる。
 と、同時に持っていたコップを落としそうになって慌てて持ち直した。このコップは兄さん達とお揃いのコップ。落とさなかったという事実に酷く安心する。
 振り向くとそこには啓兄さんがいた。
「啓兄さんか…吃驚した…」
「驚かせてわりぃ。…今日も寝れない?」
「…うん…」
 近くに寄ってきてくれた啓兄さんに心が落ち着いて、コップの水にゆらゆらと映る自分に視線を落とす。
 時計の針はとっくに12を過ぎてしまっていた。
「あの…今日も啓兄さんの部屋で寝ていい…?」
 自分のコップを取って、水を注ぐ啓兄さんが小さく息をつく。
「いいよ。てか寝れないなら俺か創の部屋来いって言ってる」
「め、迷惑だったり…」
「しないから。好きな時に来て勝手に寝ていいよ」
 その夜は啓兄さんと手を繋いで眠った。
 一人だとなかなか寝付けないのに、手を繋いでいると安心してすぐに寝れちゃうのが不思議だ。

「ねえ、啓。優部屋にいないんだけど…もしかしてまた啓と?」
「うるさい馬鹿兄貴。今優が寝たとこなんだよ。出てけ」
「…また先越されたし」
 

手を繋いで 啓優 #198
(だめだ…やはり兄弟ものが好きすぎる。
ちなみに、創[そう]が長男、啓[けい]が次男、優[ゆう]が三男です)

3/21/2025, 8:11:25 AM