笛の音にのせて
波間に消えゆくその影よ
[こっちに恋]
源平のはざまに
若き命がささやく
[愛にきて]
この戦の世を超えても
君の心に生きていたい
【たまおりの恋】
風やさしき須磨の浦
あの日、笛の音に心ふるえ
君が背を追ひし春の暮え
[こっちに恋]と
ひそやかに わらは言ひけり
あれは戦の道に花のようになる君
月のしづくに面影を探せども
君は波間に消え給ひぬ
わらはかくて髪を落とし
紅の衣を脱ぎ捨てて
尼の名をもて君を念ず
夢の夜そなたの声
[愛にきて…]と囁けば
わらの涙はまた頬を伝ふる
かの世までも願ひはひとつ
君の手を再びとらんため
わらは今宵も君を待ちえたり
【君恋ふる笛の音】
君の袖に頬を寄せし宵のこと
春風に舞ふ紅の香よ
明日戻らばまた笛の吹かむ
笑を交はせど胸はふるえぬ
戦の夜ただ君を想ふ
こころ細し敵の影に
かすかに揺るる命の灯
されど武士(もののふ)なる名にて
逃げること かなはず
君よ
[こっちに恋(来い)]と呼ばふ声を
我は夢にて聴きたいと願ふ
たとえ魂(たま)離れど
我が恋、朽ちぬものなり
刃に果てても
月夜に笛を吹かむ
君の夢路へ そっと誘はん
[愛にきて]
あれは かの世にても
君と手をとらまほし
君と ただ君と
平敦盛と玉織姫の伝説
玉織姫は平敦盛の恋人、もしくは婚約者だったとされる伝承上の女性。
平家物語には玉織姫のことが記載されていないが
戦に行く前にも2人は深く愛し合っていた。
敦盛が戦で命を散ったことを知った玉織姫は
深い悲しみをおくりながらも出家して彼のことを毎日弔ったとされている。
4/26/2025, 5:18:45 AM