たーくん。

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今日は特売日でいつもより人が多いスーパー。
娘の由香がトイレに行っている間、入口前で待っていると、客達は入口に入る前に上を向いて何かを見ている。
上を向くと、入口の真上にツバメの巣があった。
巣の中では、ヒナ達が大きな口を開け、親鳥からエサを貰っている。
「パパー、なにみてるの?」
ツバメの巣を観察していると、由香がトイレから戻ってきた。
「由香、あそこにツバメの巣があるぞ」
「ほんとだ!ちいさいとりさんがいっぱいだねっ」
由香は興味津々でツバメの巣を見ている。
少し、お勉強タイムといきますか。
「ツバメは渡り鳥の一種で、4月から5月ぐらいに巣を作って、卵を産んで、子育てをするんだ」
「へー、そうなんだー」
由香はツバメの巣に夢中で、俺の説明を聞いていない。
まぁ、いずれ学校で学ぶだろう……。
「小さい鳥さん達、大きな口開けてるなぁ。由香がご飯食べてる時と同じぐらい開いてるぞ」
「ゆか、あんなにおおきなくちあけてないもんっ!」
さっきの仕返しで、少し意地悪な事を言ったが逆に怒らせてしまったみたいだ。
「ごめんごめん」
「ふんだっ!」
由香の頭を撫でながら謝ったが、ぷいっと横を向かれてしまう。
「お詫びにお菓子買ってあげるから、ね?」
「しょーがないなー、こんかいはとくべつだよ?」
大人びた言い方をされて驚いたが、許してくれたみたいでホッとする。
「パパなんてだいっきらい!」なんて言われたら、一生立ち直れない。
でも、将来そんな日が来るだろうな……。
再び、ツバメの巣を見る。
あのヒナ達は成長して、いつか巣立ちする日が来るだろう。
由香も大人になって、恋人が出来て、結婚して、家から出ていって……。
「パパ、どうしたの?」
「えっ、ああ、いや、なんでもない。さっ、中に入って買い物しようか」
「うんっ!」
将来のことを心配しつつ、由香の小さい手を繋ぎ、スーパーの中へ入った。

5/29/2025, 11:23:50 PM