かたいなか

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【世界線管理局 収蔵品
『眠気を誘うフローリング:イミテーション』】

現存するどこかの世界で、今もオリジナルの方が稼働している、いわば現役のチートアイテム、「眠気を誘うフローリング」。
このイミテーションは、本来ならば「すでに滅んでいる世界」のアイテムを回収、収蔵、保管するハズの世界線管理局が、
諸事情により――要するに今回のお題が「真昼の夢」であったので――フローリングの持ち主に寄贈要請を出した結果、管理局の管理下に入った物。

「イミテーション」の等級は言葉のとおり、オリジナルのフローリングを模倣した下位互換であり、
オリジナルほどの効力は持たない。

ところでこの「眠気を誘うフローリング」は、その名の通り、フローリングに体を入れた生物を問答無用で寝かしつける。
取り扱い説明書を抜粋するに、
「フローリング効果による眠気症状の緩急に合わせ、弱まったところで一気に抜け出せば一応覚醒は可能である」が、
睡眠欲求が強い場合は起きられない。

<<睡眠欲求が強い場合は起きられない>>

――――――

今日も平和な異世界組織、「世界線管理局」です。
相変わらず管理局を親の仇のごとく敵視している敵対組織、「世界多様性機構」のスパイが、
管理局の業務を妨害しようと、あるいは管理局の建物を破壊しようと、潜入しておったようですが、
ぶっちゃけ管理局は機構と違って、
財源は潤沢だし、人材も揃ってるし、なにより収蔵しておるチートアイテムの質と量が違います。

その日はとある世界から、特別なチートアイテムが管理局の収蔵部に届きまして、
その名も「眠気を誘うフローリング:イミテーション」。見た目は普通の床なのに、ひとたび体がその中に入ると、たちまち眠ってしまうのです。

それこそ「真昼の夢」になろうと、
ガッツリ寝た朝の強制二度寝になろうと、
なんなら、敵対組織に潜入している最中でも。

今回のお題は「真昼の夢」。
平和な異世界組織「世界線管理局」に潜入していたスパイの皆様は、皆みんな、このフローリングの効果をテストするための被験者にされてしまって、
ぐぅすぴ、かぁすぴ。
全員仲良く、眠ってしまったのでした。

「わぁー。ホントに寝てるぅー」
機構のスパイの潜伏先に、
管理局の収蔵部局員が、先回りしてフローリングをポン!設置しまして、数時間放置。
「大漁〜、大漁〜。ふんじばっちゃうぞぉー」

収蔵部のビジネスネーム「ドワーフホト」が、
お茶淹れて楽しんで、クッキー焼いて楽しんで、稲荷子狐と遊んで楽しんで、
それからフローリング設置場所を確認してみると、
さすが模造でも「眠気を誘うフローリング」、
スパイさんホイホイよろしく、フローリングの上に、機構のスパイが落ちておって、
ぐぅすぴ、かぁすぴ、いびきをかいています……

が、
ところで、管理局を敵視している機構のスパイがフローリングの罠にかかって寝ておりますが、
その機構のスパイと一緒に管理局のドラゴンが
ぐぅすぴ、ぷしゅるる、ぐぅすぴ、ぷしゅるる、
フローリングの上に一緒に落ちて、ヘソ天してガッツリねていますよ?

「特殊即応部門の部長さんだぁ……」
ドワーフホトは、すぐ分かりました。
このドラゴンは、すごく強いドラゴンでした。
雄々しく、大きく、とっても強いこのドラゴンは、そんなドラゴンなのに、フローリングでおなかを見せて、真昼の夢を楽しんでおるのでした。

多分このヘソ天ドラゴン、機構のスパイのあとをつけて、そのスパイがフローリングに引っかかって寝てしまったので、
匂いをかいで無力化を確認しようとしたところ、
一緒に、フローリングに引っかかったのでしょう。

で、
どうやってこの、おなかプニプニ最強ドラゴンを、フローリングの効果範囲外から引っ張り出せば良いのでしょう?
ドワーフホトひとりのチカラでは、ドラゴンの体は重くて重くて動かせないし、
なによりドラゴンを引っ張り出すためにフローリングに足を入れてしまったら、ドワーフホトもフローリングの効果で、寝てしまうのです。

ミイラ取りがミイラとはこのことでしょう。

「……スフィちゃんに、頼むしかないぃ、よね」
寝ぼけて舌などベロンチョしておるドラゴンを見ながら、ドワーフホト、考えました。
「スフィちゃんなら、丁度良い機械作ってくれるぅ。スフィちゃーん、何か良い機械出してぇー」

とてとてとて、とたとたとた!
ドワーフホト、真昼の夢の中のドラゴンたちを残して、異部署の親友のところへ走っていきます。
その後のハナシは、そろそろ文字数が文字数なので、次回投稿分にお預け。
しゃーない。しゃーない(総字数1850くらい)

7/17/2025, 9:52:24 AM