『言葉はいらない、ただ・・・』
部屋のドアをあけるとそこにいたのは傷だらけになった彼だった。どこから帰ってきたのかはわからないし、何があったのか誰にやられたのか、問うてはみたが彼はただ悔しさを滲ませて押し黙っている。なんだか小さなこどものようだ。そう思ってしまったので彼に寄り添って抱きしめるのも自然なことに思えた。腕の中で驚いて固まったのはしばしのことで、それから間もなく彼は静かに震えて泣いていた。
もういい、とぶっきらぼうな声が聞こえて体を離すといつもどおりになった彼がいた。なかなか視線が合わないのを微笑ましく思いつつ、傷の手当のために彼を部屋へと招き入れた。
8/30/2024, 4:06:14 AM