「…きらい。だいっきらい」
涙交じりの声のまま、ぎゅっと抱きつく力が強くなる。
こんなの本心じゃないってきっと伝わってしまっている。
こういうことがいいたいわけではないのに。
「…うん。…それと、今日もなにもなかった、だから安心してほしいな」
そっと降ってきた彼の声にすこし顔をあげる。
「…ほんと?なんもなかった?」
「うん、奏音が心配するようなことはないよ」
温かい彼の胸に顔をうずくめる。
彼が俺の背中に回した腕のなか、ぐしゃと潰される手紙があるなんて知る由もなかった。
やさしい嘘 #171
(易しい嘘と優しい嘘…なんつって)
1/25/2025, 2:12:10 AM