no.17:魔法
チカは階段を下り続けた。地下道の暗闇はまだ見えない。
「魔法をかけるためには才能が必要。でも、魔法にかかる才能もあると思う」
チカは手摺の上に手を置いても決して触れようとはしない。コーヒーを無理やり流し込む時のぶっきらぼうな態度で、パンプスの爪先を地下道に向けている。
それは天邪鬼というより、ささやかな抵抗に近いと感じた。
「サトルみたいに両方持ってる人は希少価値が高いってこと、いい加減気づいたら。自分の才能認めて腹を括ってみなよ」
チコはそれきり黙って、黙々と階段を降りていった。
僕もチコの3歩後を歩くだけだ。
コーヒーブレイクと同じ原理で、僕には突っかかってくるけれど、チカなりに気を遣ってはいる。照れ臭さをごまかしたくて、今も口を噤むしかないのだ。
チカの心が少し顔を覗かせた。でも、その相手が何故僕なのか……どうしてもはっきりしない。
2/23/2025, 2:20:43 PM