一ノ瀬

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『 病室 』


このカラッポの病室には

僕だけが知っている思い出が詰まっている。


彼女との未来を描き続けた壁や、スケッチブック。

冷蔵庫にはいつも、こっそり彼女が好きなプリンを並べて

交換日記なんかも書いちゃってさ。

僕は、君が隣で笑っている未来は、当然のように想像出来ていた。

彼女に病室でプロポーズをした。

君は泣きながら僕の指輪を、僕の言葉を受けとめてくれたね。

真っ白なベールを掛けて、結婚式ごっこなんかもしたりして。


とても幸せだった。


彼女…いや僕の花嫁は手の届かない所へ逝ってしまったが

不思議とまたどこかで会える、そんな気がして。


僕は前を向いていた。


『 ありがとう、僕の花嫁 。それじゃあまたね。』

8/2/2024, 11:10:32 AM