テーマ:『優しさ』
「あなたはとても優しい人ですね」
―――違う。
「君って本当に優しいよね」
―――私はみんなの思ってるような人じゃない。
「ありがとう!優しいんだね!」
―――私は、優しくなんかない。
誰かが困っていたり、大変そうにしているのをみると、自然と手を差し伸べる。
―――深く考えもせずに。
誰かに何かをお願いされたり、指示を受けたりすると、快く引き受ける。
―――それがどういうことかも知らずに。
私が優しいだって?
それは違う。
私の言動が、みんなを笑顔にさせてるだけ。
聞こえは良いけれど、ただ、それだけ。
その笑顔は、一時期的なもの。
その人のことを考えれば、
もっといい手段があったはず。
その人のことを考えれば、
あえて厳しくした方が良かったはず。
でも、私はそうしなかった。
なぜかって?
それは、嫌われるのが怖いから。
それは、恨まれるのが怖いから。
人に、良く見られたいから。
こんなの、“優しさ”じゃない。
本当の“優しさ”は、嫌われる覚悟が必要なもの。
けれど、私にそんな覚悟はない。
私は、そのとき限りの幸福を与えてるだけ。
その味をしめたら、また求めてしまう。
辛いものより、そちらの方がいいに決まっているから。
みんなも、私も。
私は優しいんじゃない。
ただ、“甘い”だけ。
みんなにも、私にも。
1/28/2023, 5:29:17 AM