ミミッキュ

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"星空の下で"

「みゃあ」
 段々と暖かくなってきて、ハナも自由な時に院内を歩き回るようにもなってきた。
 そして今夜は天気が良い。気分転換にハナを連れて夜の散歩に出た──と言っても夜はまだ少し寒いのでパーカーを羽織って中に入れて胸の位置で顔を出させている──。
「おぉ……」
 空を見上げると、夜空に淡い光を纏う月が浮かび、一等星と思しき星が数個散らばっていた。その美しさに、歓喜の声を漏らす。
「みゃあ」
 急にハナが身を乗り出し、パーカーの中をモゾモゾと動きだした。
「あっ、おい!……っと、と……危ねぇだろ」
 腕の中から零れ落ちそうになるが、既(すんで)のところでハナの身体を捕らえて再び腕の中に収めて、パーカーのファスナーを少し上げる。
「みゃあ」
「お前なぁ……。外歩きてぇんだろうけど、出る時に『まだ寒いから駄目』っつったろ」
「みぃん」
 少し語気強めに叱ると、しゅん、と顔を俯かせる。
「分かればいい」
 大人しく入ってろ、と続けてお詫びの意も込めて頭を撫でる。
「もう少し歩くか」
「みゃん」
 ハナの返事を聞いて、夜の住宅街を再び歩き始めた。

4/5/2024, 3:05:17 PM