りくのいるか

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「手を繋いで」


幼稚園の頃、集団登園で
なぜか男の子と女の子が1組になって手を繋ぎながら並んで歩くのがルールだった。

羊飼いのような幼稚園の先生に追い立てられて
えっちらおっちら急な坂道を登るのだが
いつもパートナーになる男の子に
「小指だけ!」
と嫌な顔をされて
本当に幼稚園に行くのが嫌だった。

私は女の子なのに太っている上に背が1番高かったから
すごいコンプレックスでいつも地面ばかり見て歩いていた。
「恥ずかしい。
みんなと同じじゃなきゃいけないんだ…私はみんなからはみ出ちゃった…。」

まだ幼稚園児なのにいつもため息をついていた。


地面に変わった色のスベスベした綺麗な石なんかが落ちていたらポケットに入れて持って帰ったり、

そんな事が楽しみで、みんなと同じ事をしているフリはしているけれど、

自分だけの楽しみをこっそり見つけるようになった。

今思えば、不思議なのだが、あの頃の地面や壁にはキラキラしたダイヤモンドみたいな輝きがいつもあった

いつの間にか見えなくなってしまったけれど、あれは何だったのだろう。

よく、1人でグリグリと地面を掘っていて、掘るとキラキラが無くなってしまった。



私が幼い頃に手を繋ぐのは、仲間になれるのではなくて、他人と自分の違いを再確認するせつない儀式だった

絵を描いたりするにはモチーフ(対象)との対話が必要で孤独にならないと出来ないのだけれど、

私は手を繋ぐ事で、自分の孤独と手を繋ぎ、絵を描いたり物を創り出す世界のチケットをいただけたのかもしれない。




12/9/2022, 12:57:06 PM