僕たちは、向い合せでいると思っていた。
お互いにお互いを、まっすぐ見つめ合ってきたから、長く付き合えたのだと。
でも、それは違ったらしい。
僕たちは向かい合っていたけれど、お互いを見てはいなかった。お互いの瞳の中に映る、己を見ていたのかもしれない。
僕は君を知っていると思ったが、存外君のことを知らなかった。君もまた同じく。
ふたり手を繋いでいた頃は、お互いの考えることが分かったのに。実際は分かっている気でいただけだった。
そう、思わざるを得ない。
君から受けた、たった一度の不信を、僕は許せなかった。驚いた。大概のことは諦めて許してきた自分が、明確に君に対して怒ったのである。いや、正確にはこれはただの防衛反応であり、それを引き起こしたのは強い悲しみと己への落胆のためなのだけど。
渦巻く黒に飲み込まれそうだ。
過ごしてきた日々に嘘偽はないのに、まるでそれは、波打ち際で運良く波を避け続けた砂城だった。
僕たちは今、分岐点に立っている。
本当の本心を語るべき時が来た。
これまでの自分を、真実としたいなら。
ああ、どうか、どうか、
僕たちがお互いに、
誠実でありたいと願っていますように。
8/26/2023, 1:00:23 AM