「はい、どーぞ!」
ニコッ
輝くような笑顔でプレゼントを渡された俺。
会社を出た所で後輩に呼び止められ、銀色の包みに緑のリボンのかけられたプレゼントをもらってしまったのだ。
「え、ええと?」
「メリークリスマス!」
後輩はそれだけ言うと、フワッとカールがかかった髪を翻して駅の方角へ去ってしまう。
「・・・え?」
俺はしばらくその場で固まってしまった。
(なんだこれ、なんだこれ、どーゆーこと?)
俺は帰宅後、包みを開封して困惑した。
包みの中に入っていたのは、ハンカチ。
俺が普段愛用しているブランドのものだ。
(どういう意図でこのプレゼント?これくらいなら他の社員にも渡してる可能性もあるよな。あの子、気配り上手だし)
いつも、落ち込んでいる時にさりげなく声かけしてくれたり、どこかへ行った時は必ずお土産をみんなに配ってくれたり。
そういう所、密かに好感を抱いていただけに・・・。
「お返し、したほうが、いいよな・・・」
でも、俺だけじゃなく皆に配っていたのに、俺が気合い入れたプレゼントを返したら、馬鹿にされるか?いや、あの子はそんな子じゃない・・・
思考が逡巡する。
俺は結局、その場で、決心すると女子が好きそうな雑貨屋で、バスボムセットを購入した。
次の日
「これ、昨日のお返し」
イブにもらって、クリスマスにお返しなら、まだ間に合うだろう。
後輩が退勤していった所を追いかけて、購入したプレゼントを渡す。
「あ、お返し、用意してくれたんですか?良かったのに、皆にあげてたから」
後輩の目が驚きで一瞬丸くなった後、微笑んでそう言われる。
・・・やってしまった。
なんか凄く恥ずかしくなってきた・・・
俺は顔がかぁぁと赤面するのを感じる。
「ごめっ」
言いかけると、後輩の顔が至近距離まで近づいてくる。
「なんて、嘘です。先輩にしかあげてませんよ」
俺がきょとんとした顔で見ると、後輩は小悪魔的な笑みを浮かべる。
「昨日は、私のこと沢山考えてくれましたか?」
「・・・!」
俺の図星をつかれた顔を見て、後輩はフフッと笑った。
「今日も沢山私のこと考えてくださいね」
そう言うと駅へと歩き始める後輩。
俺は腰が抜けそうになっていた・・・。
(怖い!怖い・・・!!あの子は俺の第六感が要注意と告げている・・・)
そう強く感じるのに、それと共に同じ位強い予感を感じる。
(それでも・・・それでも、今日も俺はあの子の事で頭を一杯にしてしまうんだろうな)
俺は後輩が姿を消した後もずっと、まるで恋い焦がれているかのように後輩の消えた闇の跡を見つめていた。
12/23/2023, 11:07:19 AM