天津

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君と一緒に

君の言葉には毎度動揺させられた。
幼い子供のような抜けた倫理観で、面白いけれどたまに笑えなかった。ところどころ相容れないなと感じつつも、一緒にいて飽きない人だった。
君はラフに好意を口にした。その好意に戸惑った自分は毎回それを受け流していた。君の言い方が軽かったから、そのやり取りはコントのように見えたけれど、わかっていた自分は卑怯者だった。
君はよく不安定な話をした。それまでそういう類の人が周りにいたことはなかったから、聞いているこちらも不安になったが、当人があっけらかんとしているから、そういうものかと納得した。
君はある頃からぱたりと音沙汰がなくなった。
君が多忙だろうことは色んな事情から容易に想像できたから、あまり心配はしていなかった。自分が何かを与えられていたようにも思っていなかったから、拒絶されている線も覚悟していた。臆病でコミュニケーションが下手な自分は、自分から問いかけることをしなかった。
忘れた頃に、友人づてに訃報が届いた。
やはり自分では不十分だったのだ、と思った。捌け口にもなれなかったのだ。
話によく名前が上がっていた、とあとで君の友人から聞いた。後悔の念が募るばかりだった。
君と一緒に、もっと話がしたかった。しておけばよかった。
2023/01/07

1/6/2023, 7:05:38 PM