逃れられない
「ハァ…ハァ…ハァ…」
どれだけ走り続けたのだろうか。
足に感覚がないほど、長い長い距離を走った。
そんな気がする。
「逃げないと…逃げないと…“アイツ”が来る…!」
僕は重い足を、引きずりながら走った。
“アイツ”から逃げないと…。
「フッ…この俺から逃げ切れると思うか?」
俺は画面越しの、絶望した彼奴の顔を見て楽しむ。
何度脱走しても同じことだ。連れ戻すだけ。
嗚呼…早く絶望した彼奴の顔が見たい…。
「お前は…俺から“逃れられない”からな。」
俺は赤い、とても赤いワインを飲んだ。
5/23/2024, 11:43:36 AM