ある町の話。
人と人ならざるモノが住まう町の話。
人ならざるモノとはすなわち「神」や「妖」と呼ばれたモノだった。
両者とも同じ人間と異なる存在であるものの、人に信じられ祀られることで人に尽くすモノを「神」と呼び、人に害をなすモノを「妖」と呼ぶような違いがある。
町では各所で神や妖が頻繁に見られたり、数々の伝承や言い伝えが存在していたりと有史以来、神妖の存在は町と町の人々にとっては無視することの出来ないものと今日までなっている。
逢魔時。
空が揺れる。
空が異様に赤くなるのは何も日が沈んだからだけではなかった。町に潜む妖が跋扈する刻だ。大抵の妖は町に住まう神々によって人間へ害が及ばないようになっているが、時折、神の目を掻い潜って害をなす妖がいる。所謂「神隠し」と呼ばれる失踪事件がこの町で起きたとしたら、妖の仕業なのである。
赤い空の向こうで何者かが嗤う。
去年のことである。
【1年前】【あいまいな空】
6/17/2024, 3:51:52 AM