—万引き—
店内の防犯カメラに、しっかり犯行シーンが映っていた。
画面の中にみえる十歳くらいの子供がパンを盗み出している。
うちのスーパーは、最近景気が良くない。こうした安価の盗みも許すわけにはいかない。
「この黒い帽子を被った小学生男子だ。今度見つけたら捕まえるように」
店長として、店員に呼びかけた。
「店長、この子ですよね⁈」
午後三時。
バイトの男子が連れてきた。
間違いない。カメラに映っていた子供だ。
「ちょっと裏まで来てもらおうか」
俺は屈んで子供にそう言うと、おとなしくついてきた。
「昨日、パンを盗んだよね」
「はい」
無機質な声で返された。
「どうして盗んだのかな」
「……」
子供は何も言わない。物欲か、犯罪欲か。
「とりあえず、お家に電話してもいいかな」
「はい」
子供は、家の電話番号をスラスラと口に出した。
「じゃあ、親御さんを呼ぶね」
「……」
番号にかけた。すぐに繋がった。
お子さんが万引きをしたこと。店に来て欲しいことを伝えると電話を切った。
「君、どうして万引きをしたんだ?」
俺は、もう一度訊いてみた。
「……見てほしかったから」
「え?」
「お母さんに見てほしかったから……」
その子供は、悲壮な瞳をただ足元に向けていた。
お題:欲望
3/2/2026, 6:44:13 AM