ふと後ろを振り返れば、踏み固められた道が地平線の先まで長く伸びていた。
そこにくっきりとついた幾つもの足跡は、自分のこれまでの確固たる軌跡である。
最初の一歩を刻んだあの日からなかなか遠くへ来たものだなとそう呑気に思いを馳せれば、前方にはまだまだ果ての見えない景色が続いていたんだということを思い出す。
後ろへやった視線をそのままに、空へと片腕を突き出せば、大きく肘を曲げて手を振るう。
大人になったばかりの20歳の自分が、瞳をキラキラと輝かせ、今よりもっと力強く地面を踏みならし、前へ前へと進んでいた。
きっと希望に溢れた彼の真っ直ぐな道筋に、ちょっとだけ横道に逸れてしまった自分の姿は、少々影になって見えなくなっているだろう。
それでもこうして手を振るう。
ありがとう。ありがとう。
君がそうして進んでくれたから、今の自分はここにいる。
君が真っ直ぐに進んで来てくれたから、ちょっとした遠回りくらい、何てことないと思えるんだ。
ありがとう。ありがとう。
いつか君も今の自分と同じ場所で、いつかの君に手を振るうだろう。
いつかの君に手を振るう君の背に、今度はいつかの自分が手を振るうから。
【20歳】
1/10/2023, 3:13:17 PM