誇らしさ(兄妹の絆)
―――にいにはくちがわるい。
「お前ら、また宿題に落書きしやがったな!? 今日という今日はタダじゃおかねえ!」
「落書きちがう。にいにお勉強できないから、答えのらんうめてあげた」
「そう。ふぉろーしてあげた」
「どこがだ馬鹿野郎、これじゃ提出できねーだろうが!」
ぶつくさ言いながら、半分なみだめでノートを消していく。せっかく上手にかけたのに。
―――にいにはすききらいがおおい。
「にいにまたピーマンのこしてる!」
「うるせ、俺の勝手だろ。静かにしてろ」
「わーるいんだ、わるいんだ! おかーさーん!」
「ハッ、言いつけたって無駄だぞ。俺のピーマン嫌いは皆諦めてる」
「あ、間違えた。おねーさーん!」
にいにのスマホのありかなんて、お手のもの。
くすねてきたそれでにいにの絶賛片想い中の彼女に電話をかけようとして、バカか!とすぐさまそれをひったくられた。
バカはにいになのに。
―――にいには、
「おーい。迎えに来たぞ」
「あれ、にいに。おかーさんは?」
「仕事で遅くなるから不本意ながら俺に白羽の矢が立ったの。まったく何でもかんでもこき使いやがって」
「わーいにいにのお迎え!」
「お迎え!」
にいにを挟んで手をつないで、せんせいにご挨拶をして幼稚園を後にする。
「………にいに」
「あ? 何だ忘れ物か?」
「いつもおせわしてくれてありがと」
「うん。ありがと」
「………。何だよ急に。気味の悪い」
何かねだられると思ってるにいにの顔がけわしいのがおもしろい。
………にいには、くちがわるくて すききらいがおおくて すきなひとにちきんだけど、でも、
何だかんだでわたしたちの面倒をみてくれる、つんでれの自慢のにいにです。
「………アイスはやらんぞ」
「「えーケチー!!」」
―――夕暮れの町並みが、赤く染まるのを見ながら。
彼らは賑やかしく家路を歩いて帰るのだった。
END.
8/16/2024, 10:03:10 PM