「ねえ、たこ焼き食べない?」
人の波をスイスイと器用に泳いでいく
さすが都会っ子、人混みの歩き方がうまい
俺は、はぐれないよう彼女の後ろ姿を必死で追った
赤や黄色の原色が並ぶ道路脇
お目当てのたこ焼きを手に入れた彼女は
熱いうちに食べるため、人の少ない路地へと進んでいく
「あれ何かな?」
路地裏の一角
色のない小さな屋台の前に人集りができていた
人の隙間からそっと覗き見ると
色がついた何かを温めては伸ばし温めては伸ばし
くるくると形を作っていく
屋台の横にある看板らしきものには「飴細工」の文字
「飴細工って?」
「飴で動物とか花とかを作るんだよ」
「へぇ。ひとつ欲しいな」
彼女の手には出来上がったばかりの飴細工
それは赤い薔薇を模していた
「綺麗すぎて食べるのもったいないね」
***繊細な花***
6/25/2024, 10:37:16 AM