安達 リョウ

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鳥のように(猛特訓)


頭部と嘴は段ボール。折り紙を貼り合わせ目を作り、羽根は色画用紙を重ね合わせてそれっぼく演出する。
手を動かせばまるで羽ばたいているよう、飛んでいるよう。
「………何のお遊びだ、それは?」
家の中でどたどたと走り回る双子に、特に関心はないがとりあえず一応聞いてやる。

「「おゆうぎ会のれんしゅー」」

どたどたどた、どたどたどた。
―――鳥ならもう少し優雅に翔べと言いたいが、そこはお子様のお遊戯会。目を覆いたくなるようなのでなければ、クオリティーを極めろとは誰も言うまい。

「お遊戯会? 鳥ってことは桃太郎か?」
雉には見えないが。
「「違う」」
「じゃあさるかに合戦?」
って鳥っていたっけ。
「「違う!」」
どたどたどた、どたどたどた。
………足音だけは一人前だなおい。

「にいに知らないの? 舌切りすずめ」
「すずめがおんがえしする昔のおはなし」

ああ雀だったのか。
ってかその雀、そんな風にどたばた暴れ回らないだろ………

「最後につららもらって帰るやつ」
「つづらな」
つらら貰っても嬉しくないし溶けるだろ、とバカ正直に突っ込んでやるものの双子どもは何も聞いちゃいない。自主練に夢中だ。

「にいにだったらつらら、どっち持って帰る?」
「大きいのか、小さいのか」

―――話のクライマックス、メインのくだりか。
俺はう〜ん、と考えるフリをしてにやりと笑い、小さい方だなと答えた。
「俺は謙虚で慎み深いから」

………。
双子が同時にぴたりと止まる。

「「うそつきすぎてわらえない」」
こんたんミエミエすぎて、たぶん小さいのからもようかいとかヘビとかいらないもの出てくる。
「………。いいだろ別に」
お前らの昔話はキビしいねえ。

どたどたどた、どたどたどた。

―――羽をばたつかせ駆け回る姿を尻目に、俺は一体どんなお遊戯会になるやら、と
教える側の苦労を思い、ひとり憂うのだった。


END.

8/22/2024, 3:06:06 AM