かかとの高い靴を箱から出す。
鏡には
真っ黒な服を着た私が映ってた。
ストレスで何本か白髪が生えたけど
髪も、
いらない気持ちも、
全部真っ黒に染め上げた。
黒はこの世で1番信頼できる色って
誰かが言ってたから。
外に出ると
風が思ったより強くて
スカートがふわりと広がった。
上の服は薄くて
少し寒い。
この家にはもう帰らないから
お気に入りの服を着て出たいと思った。
でも流石に気温には勝てないなと、
ケープを着た。
なぜ旅に出るようなことを
してるのかというと
ある人に会うためだ。
昔、
ある人と私は仲が良かったのだけど
急に会えなくなることになって
連絡も取れないって言われて
私は泣きじゃくった。
そしたらあの人はこう言ったの。
泣かないで。
きっとまた会えるよ。
今泣いてたら、
次会った時に恥ずかしくなるでしょ?
あー、あの時泣いてお別れしたなーって。
だから笑ってよ。
その時私は
思いっきり口角を上げて
にっこりと笑ってみせた。
それからは
ひとりぼっちでも
ある人に会えるって信じて
そこに居続けた。
でもほら、
向こうが忘れてるかもだから、
別に何処にいるかなんて知らないけど
動かなきゃって思った。
ある人が貸してくれた漫画は
今でもここにあった。
"Good Midnight!"
って言うあの人の声が好きだった。
旅に出るようなことって言ったけど、
しばらくは家の周りをぐるぐるするだけ。
もう少し待とうかなって。
きっとまた会えるって
言ってくれたから。
11/30/2024, 4:13:03 PM