鯖缶

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久しぶりに重なった休日、ソファに並んで座り、それぞれスマホでわたしはインスタチェック、彼はゲーム。ローテーブルには色違いの大きなカップで、わたしは砂糖がたっぷりのコーヒー牛乳、彼は薄めのブラックコーヒー。お互いスマホの音は出さないのでカチカチという時計の音と、時折アパートの外を通る車の走行音だけが聴こえている。
インスタ巡りに一段落し、わたしは目を閉じてぽてんと彼の肩にもたれ掛かる。
「なんか、」
ぽろりとこぼれた言葉に「ンー?」と彼が応える。
肩からぬくもりとスマホを操作する小刻みな振動が伝わってくる。
「平穏な日常って感じで、幸せ。」
肩から伝わる振動が止まる。
「たった今、平穏じゃなくなった。」
思いの外はっきりとした彼の返事に「へ?」と、
頭を起こし掛けるが、肩を押され背中からどさりとソファに倒される。
そのまま覆い被さるように、彼の顔が目の前に迫る。
「君が誘ってくれたから、穏やかな気分じゃなくなった。」
「や、さ、誘ってないし!」
「でももう誘われちゃったから。」
彼の手が、するりとわたしの腰を撫でる。
「も、もう、仕方ないなぁ!」
頬が熱を帯びるのを感じながら、わたしはできるだけ不本意に見えそうな顔をして彼の首に腕を回すのだった。

3/12/2023, 2:44:17 AM