願うだけではどうにもならない。
本当に望むなら言葉にしなければ伝わらない。
空気を読む、なんてもう流行らない。
聞き分けのいい優等生でいる必要なんて、もう無い。
まだ長い煙草を灰皿に押し付けて、残っていた水割りを飲み干す。
カランと音を立てて氷が溶けた。
「君もこんなトコで管巻いてるヒマがあるなら行きな」
シッシッと追いやるように手を振ると、ソイツは突然ガタンとテーブルに手をついて立ち上がった。
「僕がいたい場所はここです!」
虚をつかれた。
呆然としていると、飲みかけのハイボールを掴んで一気にあおる。
「だから、その、·····好きです!!」
叫んだその顔が、真剣そのもので。
「順番が逆だろ、ガキ」
デコピン一発かましてやった。
END
「行かないで、と願ったのに」
11/3/2025, 3:25:34 PM