しずく

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ふと思い出した昔話。


ある国に、世界で最も美しい音を響かせるベルが教会にあったそう。
でもその鐘はクリスマス限定で、世界で最も美しい贈り物が教会に置かれたときのみになる……らしい。
らしいというのは、誰もそのベルの音を聞いたことがなかったから。

その年もベルの音を聴きたいとて多くの大富豪まで集まっていた。
ある大富豪はこの世でもっとも高いとされるものを。
ある大富豪は昔の王様の王冠を。
されどそのベルの音が響き渡ることはなかった。

王様の王冠でさえ音が鳴らないのだからと人々は落胆し、ベルの音の噂はウソなのだろうと教会に背を向けた、そのときだった。

なんともいえない美しいベルの音が鳴り響いたのは。
見ると、薄汚れた一人の男がこれまた薄汚れた銀貨をおいたところだった。

置いた本人は困惑しながらも思った。
“兄さんの想い、届いたよ”

その男は兄とここに来る途中で倒れていた女性を見かけたのだ。放っておけなかった彼らは迷わず声をかけた。

しかし弟である男は兄がどれほど今日を楽しみにしていたか知っていた。
まごつく彼に兄はお供えするはずだった銀貨を渡して言った。
“俺はこの女性を病院に連れていくから、お前は俺のぶんまで神に祈りを捧げてくれ”

そして兄が病院で息をついているとどこからともなく世界で最も美しいベルの音が、弟の心の音が響いてきたんだって。


─ベルの音─ #146
(知ってる話をどけだけ効果的に書けるか練習...
長くなってしまったしあまり効果的にはかけていないかも...
この話結構好きです)

12/20/2024, 1:10:49 PM