NoName

Open App

『時計の針』

秒針が時を刻む音だけが室内に響いている
机上のノートPCは白紙のままのページを絶え間なく映していた

急かすようにカチカチと響く機械音に
若干のイラつきを覚えながらもキーボードに指を伸ばし、
適当な文字を打ち込んでゆく
しかし、どれほど指を動かしても白紙は一向に埋まらない
波のように満ちては引きを繰り返し、ただ時間だけが過ぎてゆく

そろそろ足掛かりを掴んでも良い頃合いなのに、
どうにも上手く行かず、胸の内に燻る苛立ちは募ってゆくばかり
溜め息を一つ、虚空へと溢して天を仰ぐ
PCをスリープモードに移行させて、
先程綺麗にしたばかりのベッドに突っ伏した

目蓋を閉じて微睡みに意識を預ける
深く沈んでゆく意識の中に秒針の音だけが嫌味な程、耳に残った

2/7/2024, 6:14:47 AM