長い長い旅路の果てに手に入れたのは1枚の地図だった。女神は私に告げる。
「あなたは旅に出るのです」
何を馬鹿な……。
私はこれまで身を擦り減らして旅をしてきたというのに。山の女神が持つ宝を求めて、ここまで来たというのに。その宝が、地図だと……?
「この地図の赤い矢印がある場所に、本当の宝が眠っています」
さぁ、お行きなさい、彼女は洞窟の出口を指差す。
そんな……これからまたあの危険な旅をしなくてはならないのか。そんな、そんなことあってたまるか!?
私はきっと女神を睨んだ。
すると彼女は微笑みを浮かべたまま言った。
「人の子よ、神に反抗するとは、愚かですね」
彼女は持っていた杖を回し始めた。すると時空が歪み、別の世界が見える。これは……。数多の金銀財宝、あぁ、これこそが……宝なのか。
私が手を伸ばそうとした時、彼女は杖を振り上げた。振り下ろすと同時に財宝は崩れ落ち、形をなくしてゆく。総てが塵になった後で、微笑みを崩さぬまま彼女は言った。
「あなたのこれまでの人生は、今、総て、無意味なものになりました」
2/1/2024, 8:30:21 AM