Omu

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視線の先には、鮮明な赤。

なんだ、なにが起きた。1分前が思い出せない。
窓に映った私は何故赤に塗れているのか。

「はっ、はぁっ、ひゅ、」
ふと、荒く短い息が聞こえる。誰かが過呼吸を起こしている。
周囲に人の気配は無いが、やけに音が近い。ともかく助けなければと、ぼんやりとした頭で思う。

…雷鳴が轟き、ハッとする。息苦しさに気づく。過呼吸は自分だ。手足が痺れている。
身体に力が入らず、その場にうずくまった。

あぁ、でも、思考の靄は晴れてきた。
私は一家惨殺を図った殺人者。今ただひとりを残して、作業を終えたところ。そして、残ったひとり、彼が私の元に辿り着くのを待っている。


これは、いつも見る夢。

彼への恋を自覚した日を境に、見るようになった。
この想いが成就しなくても、彼の記憶に深く残りたい。たとえそれが最悪な形だとしても。無意識のうちに、そう考えているのかもしれない。

5分後私は、最愛の彼にとどめを刺される。

7/20/2024, 1:18:54 PM