かも肉

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作品45 冬休み


 起きてるかどうかはっきりしない頭で、朝食を食べていた。
 やけに肌寒い。部屋も寒いし、顔を洗う水も冷たかった。何より床が冷たいのがきつい。凍え死にそうだ。
 食後のコーヒーのありがたみが、体に染み渡る。明日からは朝食に熱々のスープをつけよう。
 ズズッとすすりながらソファーに座り、テレビをつけた。朝は面白い番組がやっていないので、毎朝ニュースを見ている。
 昨晩の事故や今朝の火事。ガソリン代が高騰するだか、あの俳優が結婚するだか、音楽家が亡くなっただか。果たして自分にも関係あるのだろうか。
 それすらわからない情報で、世の中はあふれかえっている。ああまた、年寄りみたいなことを考えてしまった。
 まあ実際問題、私という生き物は、ネットを通してでしか世間と関わりを持っていないと言っても過言ではないけどな。いや、少し言いすぎているかもしれないな。もしくは、あながち間違えていないか。
 どうでもいいことを考えながらカップを手のひらで包み、冷えた指先を温める。
 テレビの向こうでは、先程新人アナウンサーと紹介されていた若い人が、わざわざ寒い外で暑苦しそうな分厚いジャンバーを着込みながらも、懸命に喋っていた。
 そしてすぐ、画面が星座占いに変わる。さっきの人、可哀想だな。自分の星座を確認すると四位だった。悪くはないだろう。さっきのアナウンサーはおそらく、十一位といったところか。
 しばらくぼーっと眺めていると、場面がスタジオに戻っていた。よくわからないキャラクターが、現在の時刻を告げる。
 まずい。もうこんな時間になっていたのか。
 すでに飲み終えていたコーヒーを持って、台所に向かい、汚れた食器たちを急いで洗う。スポンジに洗剤をつけながら、ええと今日の予定はと思いカレンダーを見ると、真っ先に赤ペンで書かれた枠に目が行ってしまった。
 そこで気づく。今日から冬休みじゃないか。しかも予定なんか何もないので、焦る必要もないではないか。
 水を止め、少し濡れた手を拭く。嗚呼もったいないことをした。



⸺⸺⸺
とある誰かの、とある冬の日の思い出。くそどうでもいい。

12/28/2024, 1:53:00 PM