顔の表面に冷たい空気を感じながら、ゆっくりと重たい瞼を開ける。寝室はまだ暗く、未だ夜であると錯覚しそうになるが、すぐそばで充電をしているスマホを、ぼぅと片方で手に取り、画面を見る。画面の時刻は朝の五時を示していた。
毛布から出たくはないが、起きなければならない。しかし寒い。また眠るには時間はあるものの、二度寝は時として遅刻の原因になりかねない。たまには熱いコーヒーを淹れながらゆっくり支度をするか、とのそのそ布団から這い出る。冷えが一気に上半身、手足、そして全身へと広がっていく。裸足の足先は寒さに加えて痛みも伴ってきた。半ば駆け足で部屋の照明をつけ、隅に置いてあるヒーターを間髪入れずに電源を入れた。
部屋の空気が暖まるのを身体を縮こませて待ちながら、手足を小刻みに震わせる。
こういう時ばかりは、つい先日までの猛暑の日々が恋しくなる。あの唸るような暑さを、今この場へ持ってくれば、寒さと中和して温もりになってくれるだろう。そうすれば、暖房代が浮くのにな、と思わずにはいられない。ヒーターの電源が入り、ようやく起動し始めたのを確かめて、やかんに冷水を入れたのであった。
【ぬくもりの記憶】
12/10/2025, 3:01:20 PM