紅型

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遠過ぎる幼稚園児だった頃、
同じ園児を好きになったと記憶する。
母には「あなたは草刈正雄が好きだったのよ」と言われたこともある。

あの頃は、好きなのに喧嘩をするとか分からなかった。
好きな人がトイレに行くとか想像したくなかった。
食べる行為を見られるのさえ恥ずかしかった。

大きくなったら、お母さんと離れて暮らすのかなあと考えては寂しさで枕を濡らしていた。
豆電球がだんだん涙で滲んで来て
すごくすごく寂しくなった。


45年経った今は、全部ない。見事にない。
同じ私なのにまるで無い。

あぁそうか。
先を案じる時間って無駄なんだな。

心配は備えの材料にする為にあるもので、
そこで辛くなるものではない。
今一度それを知る。

ニュースやSNSに囚われるな。
意味がないから。

ちなみに。

自分が草刈正雄を好きだったことすら覚えていない。
時々TVに出ている彼を目にすると
母の言葉を思い出す。
なのに綺麗さっぱり覚えていない。

私の初恋は、どうやら浅いらしい。

5/7/2024, 6:32:10 PM