川柳えむ

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 始まりは私からだった。
 始まる前、私達はたまたま電車が一緒の、たまたま同じ学校ですれ違うだけの、そういう存在だった。
 そんな彼を、気付いたら目で追っていて、我慢できなくなって告白した。
 まさかOKを貰えるなんて思わなかった。心から嬉しかった。
 でも、彼は私のことが好きではなかった。
 気付いていた。彼が私の容姿を悪く言っているのは。ただ、彼女が欲しかっただけ。それでも仕方ない。実際、私はかわいくないから。
 それでも、ずっと彼の横で胸を張って歩きたいから。
 必死にダイエットして、オシャレして、メイクも頑張った。そうして、人並みにかわいくなれたと思う。
 彼が私を見る目も変わった。
 そして――彼に監禁された。
 突然かわいくなった私に不安を覚えたようだった。彼は今まで見たことがないくらい憔悴していた。
 逆に、私はようやく心から安心できた。
 だって、彼がとうとう私を見てくれた。彼が私を取られまいとこんなに執着してくれた。ようやく彼を私だけで満たすことができた。

 ――そんなに不安にならないで。安心して。
 このまま、私はあなたから離れない。


『安心と不安』

1/25/2026, 10:39:29 PM