命が燃え尽きるまで
「この命燃え尽きるまで、お仕えします」
「いや、重い重い。何時代の武士だ」
目の前のやたら図体のデカイ男はそれこそ切腹せんばかりの面持ちで頭を下げる。事実そんな大袈裟なものではないのだ。弁当も財布も忘れ、体育後だというのに飯にありつけない、腹を空かした哀れなクラスメイトに昼飯を奢っているだけなのだから。
悲痛な面持ちの割に、大柄な体躯に見合う大盛りを遠慮なく注文したのは本日転校してきたばかりの杉田春雄。当然まだ、お金貸してとたかれる相手も昼飯をねだれる相手もおらず、腹の虫を鳴らしていたのを見かねて食堂へ連れてきたのだ。まぁ委員長だしなー、とりあえず面倒みとかないと。
杉田は以前の学校で柔道をやっており、ここでもやはり柔道部に入るつもりらしい。ただ我が校は柔道強豪校であり入部にも試験がある。空腹の状態では試験どころではなかったという。
「本当に助かった、委員長」
「まだ入部してないからな。あと名前、渋谷夏樹だから」
「普段通りの状態なら受かる」
それだけの実力はあるのだと豪語する男は、大盛りにデザートまで遠慮なく付けただけあって肝が据わっている。
ちなみに。春雄と夏樹、あと秋田と冬馬というクラスメイトもおり、何だかんだつるむようになり、後に春夏秋冬なる会社など立ち上げ、命燃え尽きるまで命運を共にする関係となるのだった。
9/14/2024, 12:43:10 PM