Sui

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どうせフラれるって、分かってた。
それでも、やるしかないんだ。今日は卒業式だから。
今日しか、もう想いを伝えることができないから。

なけなしの勇気を振り絞って、卒業式終わりにそっと彼に声を掛けた。
誰もいない廊下。少し肌寒くて、上着の袖をぎゅっと引っ張りながら、口を開いた。
その間、こわくて彼の顔を見ることはできなかった。

けれど、

「―ありがとう、ごめんね」

そう優しい声色で告げた彼の表情が気になり、思わず顔を上げた。
今まで見たことない、儚げで慈しむような優しい微笑みを向けられていた。

途端に、涙が溢れて視界が滲む。うれしいのか、かなしいのか、もうわからない。
ただ、今日のことは何があっても絶対に忘れないと、そう思った。

12/8/2023, 3:26:17 PM