花影

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ただ、羨ましかった。

妬ましかった。

憎かった。

私の持ってないものをすべて持ち合わせているあんたが、ただひたすら羨ましくて妬ましくて憎たらしい。まるで見せつけられるかのよう。

お前にないものを持っている、そう言われているようで嫌になった。だから、ある日ぶちまけた。


「あんたのことが憎い」


そう聞いたあんたは、顔を顰めるわけでも涙を浮かべるわけでもなく、ただ「そう」としか言わなかった。

なんでよ。なんなのその反応は。

予想外の反応に、私の心が揺らぐ。


「どうして憎いの」

「……だって、あんたは私にないもの全部持ってる。人当たりもいいし、なんでも出来るし、いつも余裕ばっか……なんでなの、なんで私にないものがあんたにあるのよ」


後半はもはや叫ぶようだった。それでも、あんたの表情は微塵も変わらない。心がぐしゃぐしゃになっていく。


「生まれつきってこと?そうよね、結局はガチャの当たり外れだものね。ハズレならハズレらしく生きるしかないってことよね」

「違う」


凛とした声が、勢いを止める。


「なにが違うのよ、あんたは……」

「私は当たりじゃない。当たりだなんて思ってない」

「はあ!?」

「貴方から見た私は万能に見えるんだろうけど、違うよ。貴方は昔の私とよく似てる」

「どういうことよ、意味がわからない」

「じゃあ、昔の話をしようか」


そこで、あんたが昔の話をした。

ミスばかりでなにも出来なかったこと。

人当たりはよくなくて、孤立することが多かったこと。

余裕なんて、持ち合わせてなかったこと。

全部全部、今と真逆だった。

そして、今の私と同じだった。


「みんな原石なんだよ。磨くか磨かないか、それだけ」

「人と自分を比べて妬むくらいなら、磨くことに時間かけた方がいい。それが嫌なら1人になればいいよ、比べるものが無くなるんだから」

「随分と言うわね。喧嘩売ってる?」

「まさか。貴方が言うから返しただけなんだけど」

「分かってるわよ。……あんたの言葉通りなら、私は原石ってこと?」

「そうだね。磨く余地はいくらでもある」


磨くの?と挑発気味に言われたら、返す言葉はひとつしかない。


「やってやるわよ」


目の前で輝く、貴方に近づくために。


2025/02/17
輝き

2/17/2025, 12:55:08 PM