明日、俺はこの町を出る。
理由は大学が県外だからというのもあるが、一番の理由はあいつらだ。
学校で知らぬ者はいないほどのラブラブカップルだった。
彼氏の方も彼女を愛していたが、彼女の方がもっとゾッコンだった。それこそ、あなたがいないと生きていけないみたいな。
……それが現実になっちまうなんてな。
体育祭が終わってすぐだった。
彼氏が病気で死んじまった。
そこから彼女は学校に来なくなった。
彼女の友達に頼まれ、一緒に家までお見舞いに行った。
彼女は部屋にいた。でも、そこにはいなかった。
彼女は彼女の世界の住人になっていた。
……あれ以来、俺の心に大きなトゲが刺さったままで取れることはたぶんもうない。
彼氏と彼女にはたくさんの想い出があったはずだ。
それは容易に想像できる。
この町の至る所にあいつらのたくさんの想い出の欠片が散りばめられていると思うと、胸が苦しくなるようなどうしようもない気持ちに襲われる。
だから俺はこの町を出る。親には悪いがもう戻ることはないだろう。
あいつらのことを一生忘れることはできないから。
11/18/2024, 12:11:18 PM