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#18『行かないで』

 ライブも盛り上がり、彼と一緒に帰路につく。毎日のようにアタックされて付き合うことになったが早3ヶ月。こうやって送ってくれるし中々イイ奴なんだろう。どう、カッコ良かった?ボクのウインクわかった?とか、なんだかワンちゃんみたい。
「あのベースの子、何君っていうの?」
「ダメだよ、紹介しないからね⁉」
「えー」
 素直に言えたら可愛い女の子でいられるのにな。あっという間にお別れの場所で、今日も1人反省。
 でも。じゃ、また明日ねー、とヒラヒラ手を振る彼を見て、愛想尽かされたら嫌だな、と思うほどには好きみたいだから。
 待って、と背中の服を掴んで止めて、顔をうずめる。ピシリと彼が固まるのがわかる。
「かっこ…よかっ、た。ウインクされてキュンてしちゃったし、目ぇ離せないし、どんどん…好きになっちゃうし、もうどうしてくれんの、バカ」
「……あーーツンデレかぁわいい」
ガバッと抱きしめられて、今度は私が固まってしまう。急にどうしたの。いつもは言えないから。そっかそっかー。ちょと、髪型崩れる。はいはい。
「俺のこと大好きなワケね?」
 普段ヘラヘラしてる分、ステージでギターを弾くフロントマンはギャップがヤバ過ぎる。ほら、今だって。ボクが俺になるときは要注意なんだ。

10/24/2023, 12:49:47 PM