ずい

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『恋物語』

恋物語は苦手だ。二次元も三次元も。
バディものが好きでよく読むから途中から恋愛が絡んでくると、ひどいときは読むのをやめてしまう。

そんな時期もありました。

「司くんとはどうなのよ?」
「司ぁ?」

小学校の途中で近所に越してきた佐伯司。そのまま中高と腐れ縁が続いて今に至る。最初はもじもじしていたのに、今やバレー部で大活躍のエースだ。噂によると好きな人がいるからと告白を断っているらしい。

「らしい。じゃねえのよ」
「ラブレターを渡されることも減りましたなあ」
「んもー! 好きな人誰かなとか気にならないわけ?」
「推ししか目に入らないから」
「いい笑顔だな、おい!」

目の前に突っ伏しているのはオタク仲間だ。司のことが好きで、でもジャンルは違えど仲間だとわかった日から二人でつるむことが増えた。
こんなの間に入れないわと言われたのが懐かしい。
(……こんなの?)

「美代ー悪い遅くなった! 昼食おうぜ……って相良は何でそんな格好してんの?」
「早く付き合え馬鹿ーっ!」
「は? えっなに? ちょっとやめて」

その可愛らしい顔から出たのかい?と疑うような声で司に迫る相良ちゃん。どさくさに紛れて司の手にあるビニール袋を奪う私。そしてその中に入ってた芋けんぴを食べながら観戦を始める私。

胸ぐらを掴む相良ちゃんと司を頭の中で推しに変換しながら楽しむ時間は至高だ。
やっぱり恋物語は妄想に限る。

5/18/2024, 11:25:07 AM