星乃 砂

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【半袖】

「おい春樹、今度の土曜予定あるか?無いよな、一緒に合コン行くぞ」
相変わらず秋満は強引な奴だ。
「それでよー、プレゼント交換やっから用意しておけよ。じゃあなー」
「おい、何だよそれ、おーい」
まいったな、今月は風邪でバイト休んじまったし、そんな余分な金無いよ。
金額は言ってなかったから、ドンキで安いの見つけよ。

そして土曜日
「「「かんぱ〜い」」」
合コンだって言うからどんだけ来るのかと思ったら2vs2かよ。
「じゃあ、まずは自己紹介から、
俺は秋満、こいつは春樹、高校からのダチ、よろしく」
「私は冬子、短大1年です」
「わ、わはひは......」
「ゴメンね、この子すごい人見知りなの、さっきまで帰る帰りたいって駄々こねてたのを無理やり引っ張ってきたの。名前は夏子、私たち幼稚園からの親友なの」
ずいぶんと対象的なふたりだな、他人から見たらオレたちもそんなもんかな。
合コンは和気あいあいと進み、最も話してたのは、秋満と冬子ばっかりで、オレと夏子はほとんど会話がないままお開きの時間になった。
「おっと、忘れるとこだった。最後にプレゼント交換をしよう。
はい、交換!」と言って秋満は冬子と交換しだした。仕方なくボクな夏子と交換をした。
「開けてひひ?」夏子が聞いてきたので「どうぞ」と言いボクも夏子からのプレゼントを開けた。
パワーストーンのブレスレットだ。これ、高かったんじゃないのかな。
夏子は袋を開け、目が点になり口を半開きのまま固まっていた。
そりゃそうだよな、ドンキで買った500円のTシャツそれもクマだからな、無理もない。
「あ、ありがとふ...」
完全に下を向いてしまった。
もう、会うこともないし、気にする事も無いな。
「じゃあ、これでお開き、俺は冬子ちゃん送って行くから、お前は夏子ちゃん送って行けよ」
「オレがかー!」参ったな。
ゆっくり振り返って見ると、彼女は硬直していた。
「じゃあ帰りますか、家はどこなんですか?」
「ここはら5つ先の駅れふ」
何だ、送ってほしいのか?(いえ結構です)って言うと思ったのにな。
彼女の家の最寄り駅に着いた。(ここまででいいですよ)と言われると思った。でも、まだ後ろを付いてくる。せめて前を歩いてくんないかな、道が分からないんだからさ。
「そこ右です」
「はいはい」10分ほど歩いてやっと着いた。
「ありがとふござひまひた」
「うん、じゃあな」
「あのー、ア、アドレフ教へてもらへまへんか?」
「ヘッ?」断るのも何だから教えあった。
「連絡ひまふ、おやふみなさひ」
変わった子だな。
数日して、メールが届いた。
「今度の日曜日会えませんか」
面倒くさいので無視した。
1週間後、またメールが届いた。
「今度の日曜日会えませんか」
またかよ。仕方ないので「用事があるので無理」とメールを返した。
1週間後、またメールが届いた。
「今度の日曜日会えませんか」
しつこいなコイツ!
「みんなで会うなら」と返した。
次の日、秋満から「日曜日、この間のメンバーで会うって?」
「なんで知ってるんだ?」
「冬子から聞いた。俺達あれから付き合ってるんだ。お前は夏子ちゃんと会って無いんだって?冬子が心配してたぜ」
「大きなお世話だ」
「夏子ちゃん人見知りが酷いけどいい子だって冬子が言ってたぜ。それに、化粧の仕方教えてほしいって、ガンバッテルらしいぜ」
化粧したって変わらないと思うけどな。まぁいいや一回くらい合ってやるか。

そして日曜日

「お待たせしました」
そこには、クマのTシャツを着たとびっきりの笑顔があった。

           おわり

5/29/2024, 10:27:36 AM