作:ロキ

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「篠川駅で、人身事故だって」

窓辺の席の俺は、教室の窓を開けボーっと外を眺めながら、秋風を肌で感じていた時、ふと
「あの子は…何をしているのかな…?」
などと考えていた。

自習時間なのにも関わらず、お喋りにカードゲーム
をしている。賑やかなクラスメイト達

そんな賑やかの中で、
聞き覚えのある駅の名前が、俺の耳に入ってきた。

『篠川…駅…?』
俺は、呟きながら…ゆっくりと顔を
前の席に座っている友人
新(アラタ)の方に向ける。
彼は、窓を背もたれにし教室内を眺めていた。

「あぁ…ほら。ネットニュース」
新は、賑やかなクラスメイト達を眺めながら
俺の方は見ずに、んっ…。と、自分のスマホを
渡してきた。

受け取ったスマホを握りながら。
こう思った。なんだか…嫌な胸騒ぎがする…と。
本能と言うか直感?みたいな感じだ。

怖い…けど、知りたい…を行ったり来たりしながらも
ネットニュースの記事の内容を読み始めた。

〘本日、2024/09/10 8時15分頃 篠川駅上り電車にて
 人身事故が有り、なお電車は……〙

俺は、記事の内容を読みながら
頭の中が真っ白になった。

8時15分の電車は…いつも乗る電車より1本遅い。
あの子を見かけるのは大体、1本前の7時20分の電車…。
けれど……今日は、見かけていない。
寝坊でもしたのかな?…なんて考えていたけど

……まさか。……どうか…
この予感が当たらないでくれ…。














それから………
………その後の事は、あまり覚えていない。




覚えているのは、震える声で、新に…
「あの子」の事を話した事
新が、知り合いの友達に聞いて周ってくれていた事
さらに、その知り合いが知り合いを……
情報という輪が大きく、大きくなっていった。

願いは、ただ1つ…《あの子じゃ…ありませんように》






……それから、約2週間後





その日は、天気が良くカラリと晴れていた
俺は、篠川駅ホームのベンチに座り
何も感じず何も聞こえずに、ただ、ボーっ……と
あの子が乗っていた電車を何本も見送っていた。


『……今日が休日で良かったな。平日だったら
 オレもだけど、お前も遅刻してたぞ。』


冗談を言いながら、ドカッと、音を立て
右隣に座ってきたのは…
情報を集めてくれていた友人…新だった。


「…あぁ…。そうだな…」
生きる希望を無くした俺は、生半可な返事しか出来ないいま、『喪失感』の中にいて…
…心に穴が空いている。そんな状態だ。


「はあ…。」喪失感、絶望、そんな言葉と共に
ため息しか出てこなかった。
こんな状態の俺を見て、新が呟いた。


『……今、この状況で、
 コレが欲しいかどうかは知らないし
 渡すのが、合っているかどうかも分からないが、
 ……コレをお前に渡しておくよ。』


そう言い残し、右手がジャンケンのグーの形に
なっている俺の右手に無理矢理ねじ込み
紙を握らせ彼は、その場を静かに去って行った。

俺は、チラリと右手を見た。気分は…のらないが…
開いてみるか…と、ねじ込まれた紙を
両手で、ガサゴソと紙を広げ始めた。
元の大きさまで広げられた紙には、こう書いてあった。


《 あの子の情報

  港藤原学園 2年6組 宍戸原 恋芽
 (ししどはら れんか) 》


この文章を見た瞬間、涙が溢れた。
胸のつかえが外れたかのように…
ボロボロとその場で、泣き崩れた。


脳裏に浮かぶのは…
篠川駅の上り電車に乗る。
茶色のボブ髪と美しく歩くその姿…。
(※胸の鼓動に登場)



神様は、残酷な殺人鬼だ。何故なら
2度と会えない様にするからだ。


あぁ…。一度で良いから
恋芽さん と、名前を呼んでみたかったな…。

俺の『はつ恋』は、絶望の中…静かに幕を下ろした。


           (※19:18 編集済)

9/10/2024, 1:57:33 PM