『見なさい。時計の針が、また一つ、歩みを進めた』
『もうすぐだ……分かるかい? この技術が完成すれば、人々の暮らしはもっと快適になる。この技術だけではない、科学が進歩し、人々がより多くの事を、自分の意思で考えるようになる』
『世界が完成するまでの刻限へ、針を進めるのは、他ならぬ、我々の素晴らしい発見と努力なんだ。希望を見つめる力が、この世界をより良くするんだよ』
『──じゃあ、針がてっぺんまでいったら、どうなるの?』
『良い質問だね。その時は、』
『世界はきっと、際限無く美しいのだろうね』
草木も生えぬ荒涼の地で、壊れたレコーダーがそんな音声を流したとして。
もはや聞くものも居なければ、そんなものは無いものと同じではないだろうか?
【時計の針】
2/6/2023, 4:34:15 PM