現実逃避
灰色の朝が窓を叩くたび、
私はそっと世界の音量をしぼる。
呼びかける声も、迫ってくる義務も、
遠くの海鳴りみたいにぼやけていく。
机の上の未開封の書類は、
触れれば現実が溢れ出す水風船。
だから今日も、指先ひとつで
別の景色へ逃げ込んでしまう。
目を閉じれば、
誰にも名前を呼ばれない場所がある。
時間は溶けて、境界はほどけ、
私だけが私のままでいられる空白。
戻るべき現実は、
いつだってそこに立ち尽くんでいるけれど、
せめて今だけは、
息をつける場所が欲しいのだ。
逃げているのではなく、
生き延びるために隠れているだけ。
そんな言い訳を胸に抱きしめながら、
今日も私は、静かに世界から身を離す。
眞白あげは
2/28/2026, 3:15:55 AM