毎年、冬の終末に私は夢を見る。幼い頃の記憶だ。
厚い雪化粧をした田圃や山の木々達。花と耳を赤くしてはしゃぐ子供達。私もその一人。雪だるまを作るべく小さな雪玉を転がしていた。石や砂利、砂の混じった歪な雪玉をせっせ、せっせと両手で押したり、時には雪を掬って手でくっつけたり。
ポケットに手を入れて歩けば先生に叱られ、走っては転び、降る雪に舌を突き出して舐める。本当、馬鹿な事をやった。
夢から覚めれば、カーテンの隙間から差す光を睨みながら、それを全開にする。
叢雲が流れ、鶯が囀り、春の刻を告げていた。
『時を告げる』
9/6/2024, 2:25:30 PM