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 20歳になった。

 その日の夜には先月生まれの友人達が、一升瓶を担いで家に来た。
 どうせケーキもくわねぇんだろ。
 うるせぇ、余計なお世話だと、怒鳴りながらも声は笑っていた。
 両親からはラインが来ていた。お誕生日、おめでとう。簡素な文に、特に返信もしなかった。1月になれば嫌でも親孝行をするのだから。

 初めて潰れるまで飲んだのは、その翌週に先輩に連れ出された時だ。これでお前も大人の仲間入りだな。オウムみたいに同じことを繰り返された。悪い気はしなかった。
 次の日、酷い頭痛に起きる気にもなれずに、昼過ぎまで寝ていた。西日の中で飲んだインスタントの味噌汁が、途方もなく美味かったのを、覚えている。

 一月もたてば、役所からハガキが来た。年金のご案内。とんでもない文句を言いながら、しぶしぶ煩雑な手続きを行った。
 どうせ貰えもしないのに、とか。これだから政治家は、とか。
 ……件の政治家の顔など、首相以外に分かるわけもない。それでも半年はそこらに貼られたポスターが嫌いだった。
 そういう理由で、その年の選挙にも、行かなかった。



 ……なんとなく。
 このまま年を重ねていくのだろう、と、ある時思った。

 振り返ればそんな行動は、去年と対して変わりもせず、或いはそこらを歩いてるおじさんとも変わらなく思えた。

 だが確かにこの年は、自分は一皮剥けて無敵な気がしていたし、このまま年を重ねる確信が、成熟した証のように思えた。

 無敵な自分は、その実意外と増えた「大人としての義務やマナー」に対するストレスやもやもやを、吹き飛ばせる気さえしていた。

 これも、酒が入っていた。
 大層な講説を垂れる先輩に、同期諸君に、同調するするように声をあげた。
 成人したのに、周りは皆俺たちのことを子供扱いするとか。
 学生に対して大人の対応を求めるな、とか。
 全く、矛盾しているそんな言葉が、飲み屋で高らかに謳えば正義の御旗にった。

 ああ。

 ならばどうして、同じことを繰り返している10年後が、こんなに虚しくなるものか。


【20歳】

1/11/2024, 4:53:01 AM