オカルト。300字小説。
生きている者勝ち
『四十九日目……』
亡くなった親友が枕元に立つ。
『言ったよね。正直に自分の気持ちを伝えなければ、五十日目には彼をあの世に一緒に連れて逝くって』
射干玉色の髪の間から淀んだ瞳がギラリと光る。
私は息を飲むとスマホの番号をタップした。
「もしもし、明日大事な話をしたいんだけど二人きりで会えないかな……」
立葵がしとしとと降る雨に濡れている。
「これで本当に心残りは無いのですか? 貴女も彼が好きだったでしょうに……」
死神の言葉を少女の霊は遮った。
『無いわ! 早く連れて逝って!』
生きている者勝ちだから……。
小さく零して俯いた彼女を隠すように、死神が大きな黒い傘を差し掛ける。
その影から咽び泣くような声が雨音に混じった。
お題「正直」
6/2/2023, 11:26:55 AM