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花が咲いておりました。
透明な花が
咲いておりました。
鼻腔をくすぐる甘い香りが何とも魅力的で、
持っていた本を水溜まりに放り出し、
僕は思わずその場にしゃがみこみました。

見れば見るほど透明で
その花弁は地面に生える、なんとも柔らかそうな雑草をうつしだしています。

うちにもってかえって、
この花を育てられたなら。

なんて
なんて楽しそうなアイディアだろうか。

我慢できず、僕はその花に、花弁に、茎に
触れてしまいました。
たちまちその美しい花は
存在をなくし、消えていくのでした。

すこし、残念でした。


「あ、本が」




10/7/2025, 6:20:35 AM