冒険者ってのはね、冒険するから冒険者なんだよ
ダンジョンと呼ばれる、普通の人が探索できない領域へ危険を承知で入っていく
そして、新たな発見をしたり、貴重な素材なんかを手に入れて人々の役に立ったり
まあ、ロマンあふれる職業だな
そう、冒険者とは、危険と引き換えにロマンを追求する、厳しくも夢のある熱い連中なんだ
そのはずなんだが……
なんか、便利屋みたいになってないか?
商人の護衛
盗賊の討伐
力仕事の手伝い
人探し
ひどい時には失せ物探し
これらは冒険者の本来の仕事ではない
確かに戦闘能力はある
危険生物との交があるからな
研究者なんかをダンジョンの奥地へ護衛しながら連れて行くこともある
当然筋力はみんな強い
何かの痕跡を探すのも得意分野だ
だが、さっき挙げた仕事は冒険者ではなく、騎士や傭兵など、その道のプロがやるべきことだ
冒険者は比較的安く済むからといって、何でもかんでも頼り過ぎだと思う
しかも、騎士もできるだけ動きたくないのか、自分たちの仕事を冒険者に積極的に回してくる
傭兵は、安い仕事は無視し、より稼げる仕事に殺到だ
力仕事も、継続して雇うより、都合よく冒険者をその都度使いたがる
で、歪んだ形で、冒険者は依頼しやすいよ、なんて噂が広まり、いちいち冒険者に依頼するなというようなものまで仕事として舞い込んでくる始末
冒険者の地位は下がる一方だ
我々冒険者は、冒険がしたいのだ
いつか、冒険者に冒険の依頼が来るその日まで、我々は冒険者としての活動をアピールし続ける
そう思っていた
時代は変わるものだ
ダンジョンが冒険者でなければ行かれないレベルで危険な地、ではなくなった
ダンジョンに生息していた危険生物
実はあれは、ボスと呼ばれる強い怪物から生み出されていたのだ
ある時、ダンジョンの奥深くにいるボスを発見した冒険者たちがいた
彼らが苦戦しながらもなんとかボスを倒すと、危険生物はそれ以降、ダンジョンから姿を消した
ボス討伐ブームの始まりである
そして、あらゆるダンジョンのボスは、冒険者たちによって狩りつくされ、危険生物は全滅
ダンジョンの危険性は自然環境だけになり、その程度だったらアクティブな研究者くらいなら充分活動できる、という状態になった
冒険者は冒険を廃業せざるを得なくなった
これを見越していた冒険者たちは、危険生物が全滅するまでの間に、新たなスキルを勉強、身につけ、のちに転職
冒険者を名乗る人間はごっそりといなくなった
皆、それぞれの新たな道を見つけたのだ
そして私は……
こんなことになるとか、一切考えていなかったので、新たな道が見つからず、今、必死こいて職探しをしている
都合よく使われていた冒険者たちは、その時の経験を活かして本業になってしまったため、数少ない私のような転職できなかった冒険者は、もはや都合良く使われることすら無く、生活は厳しい
なんでこんなことになったんだ
わかってたなら、誰か教えてくれてもいいじゃないか
私は何に向いているんだ
私はちゃんとした冒険者であり続けたいと思い、冒険以外の仕事はあまりしてこなかったんだ
あぁ、自分は都合良く使われないぞ、なんて誇りは捨てて、冒険者で食っていけてた時代に、色々な仕事を経験しておくんだった……!
7/10/2025, 11:37:08 AM