『この道の先に』
仕事の帰り道、ふと既視感に襲われた。
僕はこの道を知っている。
この道をまっすぐ行くと、僕らが住んでいた施設がある。
いや、実際には違うのだが、なんとなく、この道をまっすぐ行くと施設に辿り着く。そんな気がしてならない。
怖い‥
僕はその道を見つめたまま動けなくなった。
「どうした?疲れたか?もう少しで家に着くから頑張ろうぜ」
兄に手を引かれ足が進んだ。
そうだ、僕らはもう施設を出たんだ。
そこには戻らなくていい。
先ほど気になった道を横目に別の道を進む。
この道の先に僕らの新しい家がある。
兄と僕と妹と3人で暮らす、新しい家。
そこは怖くない、笑って暮らせる場所。
帰ろう、僕らの家に。
先ほどまで固まっていた足が、嘘のように軽く進んだ。
-fin-
7/3/2024, 11:07:28 PM