本日は快晴、旅日和である。
自分は依然何処か知らない土地へと旅立つ銀色の鳥を見送っている。時計の針は何も言わず淡々と出立時刻を延々と告げている。
手に握られたチケットはもっと後時間のチケット。
知らない土地の知らない機体に乗るためのものだ。
学生時代から愛用しているジャケットを窓の反射越しに眺める。ふと、ノスタルジーな感覚に陥いった。
目を閉じると閃光のように古ぼけた記憶が蘇る。
そんなに時間は経っていないはずなのに、悲しいことにどんどん薄れてしまうのだろう。
まだ少年だった自分は、目の前のことばかり気にして、時に叱られて凹んで、調子に乗っては……
自分はどうしてこうも変わってしまったのだろうか。あの頃は友に囲まれながら、外界から隔たれた全寮制の学校に青春をつぎ込んで暮らしたのだ。
あの頃に戻りたいと願う事も、貴方は理解してくれるだろうか。
時計はチケットに綴られた時刻を告ようとしている。
自分は掌中の紙切れを握りしめ、雑踏の中足を規則的に進めながら搭乗口へと向かった。
"過去の自分とは未だ手を切れぬまま、のたうち回りながら生き長らえる自分のことを戒めてくれる人は、この先現れるだろうか?"
柄にもなく寂しくなる。
ジャケット越しにでも胸が痛むのが分かる。
この銀の鳥が、この胸の苦しみをこの地に全て捨て去ることが出来たら良いのに…
今はそう思うことしかできない、そう思い知らされた気がした。
<過ぎた日を想う>
10/6/2023, 12:48:37 PM