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〜ススキ〜


「あのキラキラしているのはなんでやんす?」

一張羅猫が首をひねりながら言う。
初めて見るでやんすねぇ。

「あれはだな、ススキ、というのだよ。うぉほん!」
博士が自慢のひげをなでつけながら答える。博士はもちろん猫である。

ススキ?ススキとな?一張羅猫は何度も繰り返しながらススキめがけてずんずん歩いていった。
「見てくださいな博士。ふわふわでさあね!あっしは生まれて初めてこんなふわふわにさわったでやんすよ」
一張羅猫の嬉しそうな鳴き声を背中越しに聞きながら、博士は夜空を見上げた。

丸いお月さまが照らす黄金のススキに、タキシードのような模様の猫がいっぴき。
いい夜だのう。博士はススキスキスキ、と歌うようにつぶやいてから、ふわふわに触るために一張羅猫のあとを追った。

11/10/2023, 11:58:53 AM